<ruby>神籬<rt>ひもろぎ</rt></ruby>の兎

神籬ひもろぎの兎

 舞台は近未来の日本。禍津日まがつひと呼ばれる異界の物怪が国土を蹂躙し、すでに国の4分の1が真っ黒な底なし沼に沈んでいた。
 禍津日による浸食に対抗する近畿の神社組織・畿内二十二社庁。その大和支部の機動修祓部隊長である10歳上の姉・蘭珠らんじゅのもとで、三乃和琳みのわりんは禍津日と日々戦っている。赤ん坊の頃に禍津日の呪いを受けた琳は、呪いの力を呪装に換え、この国で唯一禍津日を倒す力を持っていた。
 昔は仲の良い姉妹だったのに、いつの頃からか琳に対して冷たい態度をとる蘭珠と、そんな蘭珠に近づきたい琳。


 そんな中大和支部は、異界が現世に接近し大量の禍津日が襲来する「常夜」の到来を察知する。それは16年前、蘭珠と琳の両親の命を奪った災厄だった。
 間近に迫る常夜に備え、ふたりは結界を張るための神器を受け取る巡礼の旅に立つ。
 その旅路の先に待つものとは――。



 退廃世界×和風、姉×妹×複雑な感情、呪い×変身×神器!
 バトル百合を愛して止まないさゆと先生が描く、最高に熱くて痺れるクライマックス級和風バトル百合!
 バトル百合小説アンソロジー開幕に相応しい、超熱量な作品。この痺れを是非体感してください!

 夢にまで見たバトル百合小説アンソロジー! 好きな物を詰めまくった結果、和風ファンタジーが出来上がりました。タイトルの「神籬」とは神の依代のことです。
 本作の見どころは、立場の違いがもたらす姉妹のすれ違いです。日常とは異なる「巡礼の旅」によって、主人公の三乃和琳(妹)は様々な人に出会います。また、蘭珠(姉)も想いを募らせます。巡礼シーンでは豊かな自然の風景や神社が出てきます。旅の終わりに、バトルと絡めて二人の感情はどう変化していくのでしょうか。見守っていただけたら幸いです。



 ……と体のいい文章はここまでにして、「少女兵装」って四字熟語めちゃくちゃ萌えませんか? 戦記絶唱シンフォギアという大好きなアニメシリーズがあるのですが、主人公たちが纏う決戦装束(要するにメカギミックを盛り込んだ変身衣装)がこのように表現されていました。
 以来私の胸には「少女兵装」の四字熟語がシリウスの如く輝き、いつか必ず書くんだという気持ちが膨らんでおりました。好きなものを詰めるならこの機会しかないと思い、生まれたのが「呪装」です。この和風少女兵装は呪いによって放たれる穢れを用いて鎧を形成し、攻撃力をアップする効果があります。


 主人公は呪いに蝕まれつつ「呪装」を纏い、痛みと戦いながら、血で血を洗う激しい戦いを繰り広げる16歳の少女。中二全開だなぁと思いつつ好きを貫いたら最高に自分好みの小説ができました。
 主催そしてトップバッターとして、一番槍、突貫します!

血潮に弾痕

血潮に弾痕

 グレーゴル病――それは身体がヒト以外のものに変質する奇病。
 人間と特別市民グレーゴルが共生する特別指定独立自治体――通称「町」で、少女は目覚める。彼女は非常に珍しい吸血鬼型のグレーゴルで、自らの名前を含むおおよその記憶を失っていた。
 「町」の特別市民相談室トクシ所属の医師、芹川細流せせらぎは、「アカネ」と名乗ることにしたその少女をしばらく預かることになる。
 細流に対して不思議な感情を抱くアカネと、アカネに対してどこかよそよそしい態度をとる細流。
 時を同じくして、動物の変死事件が「町」内で頻発。満月の夜、アカネと細流は犯人とおぼしき吸血鬼型グレーゴルと遭遇する。
 それは、12年前に亡くなったはずの細流の恋人だった――。



 過去を失った少女と過去に囚われ続ける女性、そして過去から蘇ったかつての恋人。
 新芽夏夜先生の緻密な文章で構成されたリアル×ファンタジーの世界観、そこで繰り広げられる人間ドラマ、ミリタリーアクションをご堪能ください!

 本バトル百合小説アンソロジーにお誘いいただい時からずっと考えていたのは「なぜ彼女たちは戦うのか?」でした。
 バトルだけがメインなら理由なんて添え物程度でも十分です。しかし本アンソロジーのテーマは「バトル百合」。バトルと百合の両方を掛け合わせるにはただ戦わせるだけでなく、戦う彼女たちの関係性が、そして戦いに込められた彼女たちの想いが何より重要だと考え、頭を悩ませながらひたすら練り続け、プロットから推敲に至るまで色々な方からご意見やご指摘をいただきながら、全身全霊を込めて書き上げました。



 舞台となるのは現代日本のどこにでもありそうなごく普通の地方都市。ただ一つ普通と違うのは、そこでは身体がヒト以外のモノに変質した人間――グレーゴルが一市民として暮らしていることだった。
 リアルとフィクションが混ざり合う「町」で巡り会ったのは、過去を失った少女と過去に囚われ続ける女。そして二人を襲う、過去から蘇った「吸血鬼」。
 彼女たちは何のために戦うのか。百合とバトルの化学反応をぜひその目でお確かめください!



 ……とまあ、ここまで真面目にコメントを書いて締め切りに間に合うように提出していたわけですが、作品紹介トップバッターのさゆとさんのコメントが思っていた以上にテンションMAXで萌え語りされていたので、これは負けていられないぞ! と触発されてここからは個人的な見所と萌えポイントを追加で書かせていただいています。差し替えをお許しくださった主催様に感謝!



 メンバー紹介ページでも少し触れていましたが、今作は個人誌『恋に凶器』所収の「月に弾丸」(カクヨムにて公開中)とつながるお話です。世界観や舞台は異なるので続編というよりスピンオフ的な、独立した作品ではあるのですが、主人公以外はほぼ全員『恋に凶器』シリーズの各作品に登場したキャラクターを元にしております。しかもバトル百合に相応しく、各キャラには戦闘力を得てもらいました。どの作品のキャラが登場し、どのような戦い方をしているのか、是非今作と拙著『恋に凶器』を読み比べていただければと思います。今ならBOOTHで販売中!(ダイマ) ……それにしても、バトルとは無縁だったキャラ達の戦闘スタイルを考えるのは存外面白かったですね。気付けば今作には登場しないキャラの設定まで出来ていたので、また同じ世界観で書きたいくらいです。



 ところで今回ほとんど経験の無いバトルシーンを書くにあたり、銃の基本や実践式格闘術などについて参考文献を調べたりしたのですが、魔法や超能力のようなファンタジーな力を持ちながら、バトルではあえて銃火器や刃物などリアルな殺傷力のある武器で戦うスタイルが大好きです。たとえば『魔法少女まどか☆マギカ』の暁美ほむらのような。ファンタジーとリアルの融合。今作でも「グレーゴル」という超人的な力を持った人々が戦うことになるのですが、あくまでもリアリティ重視を目指しました。……まあ、厨二全開の異能力バトルも大好きなので、その要素が無いわけではないのですけどね!



 そして今作はバトル百合であると同時に、私の大好物な年の差百合でもあります。一回り以上年が離れたおねロリです。大人と子ども、この年の差がもたらすのは視点の差でもあります。同じ目線には立てない――物理的な身長差以上に、価値観、立場、信条的に。年の差があればあるほど、本質的には対等にはなれないのかもしれません。けれどその差=ギャップこそが大きな魅力だと思います。古今東西人類皆ギャップ萌え!(合言葉)



 既にお気づきの方もおられるかもしれませんが、タイトルの「血潮に弾痕」は「月に弾丸」のセルフオマージュでもあります。意味は「残らない」。果たしてどういうことなのか、ぜひ本編でご確認ください。

 乞うご期待!

50回目のムラサキ

50回目のムラサキ

 月夜紫つきよむらさきは感情を表に出さず、神秘的な雰囲気を纏った「まるで日本人形のよう」な女子高生。ある秋の日、生徒会の業務で遅くなった紫は白い獣のような怪物に襲われる。不思議と恐怖を感じないままに死を受け入れようとしたとき、一人の少女が現れて怪物を一刀のもとに切り伏せる。
 少女の名は暁星あかつきあかり。戦うときだけちょっと口が悪くなる、お嬢様学校に通う女子高生。星がいうには、紫は四十九回の転生を繰り返し、その度に白い怪物「バク」に夢(=感情)を食われているらしい。奪われた紫の夢を取り戻すべく、星は刀に変身するテディベア・ニノマエと共に時空を超えて戦っていた。
 前世の記憶がない紫と、四十五回目の転生をした紫に会ったことがあるという星。たとえ自分のことを覚えていなくても、大切な紫を守る。全てのバクを倒すまで、星はまっすぐに前を向く――。



 夢を奪われ続ける少女と、想い人の夢を取り戻すために戦う少女の想いが交差したとき、輪廻の果てから全ての元凶が現れる。
 お姉さまのパンツが見えて昇天しかかったり、もらったココアを神棚に飾りながら戦う少女の姿は必見!
 あべかわきなこ先生が紡ぐ、伝承と因果がもたらす笑いあり涙ありの純愛ファンタジー、尊さに浸りながらご覧ください!

 はじめての小説のアンソロジー参加(というか主催その2)、参加を快諾してくださったほかの作家さん達は皆さん猛者、しかも個性派! ということで私はどういうお話を書こうかなあと悩んだ結果、二つほど考えていたお話を没にし、私の原点に帰って少ーしだけガールミーツガール風味、健気な女の子が輪廻を超えて大切な人を助けに行く、そんな王道ものになりました。
 ひとりの女に執着し殺し続ける女神と、殺され続ける女。そしてそんな彼女を救いたい少女。そんな三角関係です。
 それぞれの想いをちゃんと書こうと思ったら、メロドラマみたいになってしまったのですがそれはそれとして私らしい作品になったのではないかと思っています。
 気負わずすんなり読んでいただけるお話だと思います。


 バトル的な面で言うと、JKが制服で刀を持って戦うシチュエーションが好きな方は是非よろしくお願いします!
 昔からそういうの大好きです!


 と、軽い感じでコメントを書かせていただいたのですが他の執筆者様方があまりにも熱いコメントを書かれるので私も少しだけ、バトルにおけるチラリズムについて話をしようと思います。
 個人的にバトルもので不自然に服が破けたりパンツが丸見えになるのはあんまり好きではないのですが、丸見えになるならなるでそれは一瞬で構わないと思うのです。
 かくいう私も自作の小説「女領主とその女中」の中でメイドさんのロングスカートをたま~に翻します。ロングスカートがあえて翻るのも素敵。そこに武器が見えたら最高。
 見えるなら見えるで、一瞬だけ、その一瞬だけで美しくはないか? 
 ――まあ数年前ヴァルキリードライヴマーメイドというアニメにドはまりした私が言うなって話なのですが。
 件のアニメ、絵もお話もアームと呼ばれる個々の武器を使ったバトルも大好きだったんですけどかなりエッチだったのでリアルな知人には勧めにくくてTwitterで界隈の方々と楽しく交流させていただいていました。今の私が百合を書いているのもその頃が楽しかったお陰です、本当にありがとうございます。


 さてそういうわけで今回の「50回目のムラサキ」にもチラリズムが存在します。手が勝手に動いていました。というかこのシーンがなかったらこのお話も没になっていたかもしれません。さりげないシーンですがそれをきっかけとしてヒロインのキャラが固まったところがあります。人を選ぶかもしれませんが、彼女のことを気に入っていただけたら幸いです。

花の<ruby>徴<rt>しるし</rt></ruby>

花のしるし

 “──――私ね、どんな願いでも叶えてくれる魔法の本を見つけたの”


 そう言い残して、3年前に忽然と姿を消した唯一の友人。
 まるで最初から彼女が存在しなかったように振る舞う周囲に違和感を覚えながら、高校生になった杵築きづき詩杏しあんはただひとり、彼女を想う。


 自室で微睡んでいた詩杏は、気が付けば見たこともない薄暗い森の中にいた。
 出口のない森の中、影絵のような獣たちに襲われ窮地に陥った彼女の前に、ひとりの女性が現れる。
 蒼い蝶のようなドレスを纏うその女性は、助けるかわりに自身に名を与えよと詩杏に言う。
 彼女の姿から想起したネモフィラの花――詩杏が彼女を『フィラ』と名づけるや否や、フィラは獣たちを魔法のように一掃した。
 自らを「悪魔ルルーディ」と称するフィラは、この森が魔女の森であること、魔女からの招待状を手にした者が森を訪れ、誓約の誓いと引き換えに悪魔と契約を結び、自らの願いを叶える儀式を執り行う場なのだと告げる。


 自らの意思で森に入ったわけではない詩杏は、願い事を保留とし、仮初の契約のままフィラと共に森を行く。
 そこで詩杏は、3年前に姿を消した友人、柚巴ゆずは璃乃りのと再会を果たすのだが……。


 幻想的な世界の中でぶつかり合う、悪魔と契約した少女たちの想いと願い。
 杜岳先生の重厚感ある戦闘描写×絵本の中の世界を想起させるファンタジックな箱庭世界の見事な融合は必読です!

 バトル百合小説アンソロジー。
 それに連なる一篇として相応しくある物語、そしてその姿とは何か。
 それは、互いを思い合う様、心の葛藤である。では、彼女達が何を以て戦うのか、そこに至った理由、それを為す舞台とは────
 寄稿にあたり、そんな事をずっと考えてきましたが、やはり「自らの想いと願いを以て戦う少女の姿こそ美しい」という結論に至り、今回のお話が出来ました。


 持ち味として明るい作風とは言えませんが、合間に摘まむ軽食の様な気持ちでお読み頂けたなら幸いです。



 ────真面目か。
 はい、本題はここからですね。
 もう、あまりにも他執筆陣が熱い心情をこれでもかとコメント欄に叩き付けているもので、なるほどここが戦場か、と震えている次第です。
 当初は、もっとお手軽な感じの学園ものとかが良いのかな……とか考えていたのですが、なにせ題目が『一蓮托生』です。
 こいつは、ちょっとした殴り合いじゃ済まない殺し愛こそが求められているのだな! と、勝手に解釈し、首がもげるほど方向転換をした記憶が、ごく直近まであります。
 ネタバレ禁止との旨、多くは語れないところではありますが。
 アンソロジーの語源は「花集め」や「花摘み」といったもの。タイトルにも『花』を題してみたり、物語の中でもモチーフにしてみたりと、そうして、随所に散りばめたギミックやこだわりなどに気付いて頂けたりすると嬉しいです。


 およそ十年以上前に初めてバトル百合を書いた時には「しまった、早過ぎた」と思い悩んだものでしたが、いまこうしてお声掛けを頂いたからにはと精一杯の作品を提供出来たのではないかと思いたい……! 思いたいですのよ?

インタビューウィズウィッチガール

インタビューウィズウィッチガール

 ――一回やるとやめられない、一度ハマると抜け出せない。そういう魔法少女ってわりといるんだよ。知ってた?


 怪魔たちから地球を護るために戦っていた、折原かれん――元魔法少女・救世少女ラピュセル☆だるくは過去を思い、語り始める。
 世界を救った後に魔法の力を失い、長らく行方不明となっていたかれんは、悪い妖精と手を組んで魔法少女斗劇ウィッチガールバトルショーの女王様に君臨していた。


 魔法少女斗劇はカワイイ魔法少女が殺しあう気で闘う様を眺めて楽しむ、賭けて喜ぶ、アンダーグラウンドのエンターテイメント。ショーでの闘いに生き甲斐を見出していたかれんは、やがて対立した新人キャストの不死身のアンデッドジョージナから闘いを挑まれる。


 唯一二人きりになれる場所、リングの上で全てを話そう――。


 ピクルズジンジャー先生の十八番である、意地と意地がぶつかり合う魔法少女の物語。
 酸いも甘いも共存する独特の世界観と、人間味溢れる魔法少女たちのぶっ飛んだキャラクターは最大の魅力。熱く激しいバトルと合わせて、心を鷲摑みにされること間違いありません!

 この度、バトル百合小説アンソロジーに参加させていただきました、ピクルズジンジャーと申します。普段はカクヨムで魔法少女やら戦闘少女たちが世界の危機より己の人間関係場に生じた問題解決を最優先するタイプの百合小説をメインで書いております。可愛い話を書こうとしても気が付けば登場人物たちが罵りあい殴りあっているという、ガサツな作風が特徴です。


 さて、バトル百合……、バトルと百合。闘う女子と女子。非常によろしいものですね。思えば幼い頃から、腕っぷしがやたら強い女子、異能や格闘技術を駆使して対戦相手を撃破する少女、銃器や刀剣を武器に華麗に戦うお姉さんといったキャラクターが大好きで、憧れの眼差しで見つめておりました。どちらかというと、国家や使命を背負って過酷な戦場へ赴くシリアスなタイプのものではなく、自分の中の倫理観や単なる私利私欲に従って闘うタイプのストーリーやキャラクターが好物です。
 たった一人で闘う孤高の戦闘女子も大層素敵ですが、複数の戦闘女子が登場する作品はなおのことよろしいものです(←言い切ったよ)。目的のために共闘するもよし、パートナーやバディと息の合ったコンビネーションを見せるもよし、憎しみ合うもの同士互いに刃や銃口を向け合うのもまたよろし。
 当方、男女間の恋愛要素が少なく、女子と女子による人間関係のこじれあい──友情や愛憎、打算づくの一時共闘など──が多い作品ほど評価が高くなりがちな人間であるが故、「なんならいっそ、登場人物は九分九厘女子であってもいい。味方も敵も女子ばっかりで、ガールミーツガールはあってもボーイミーツガール要素のない作品がもっとあってもいい」と考えるようになるのも当然の帰結と申せましょう。


 闘う女子と同じくらいに好きなのが、魔女っ子・魔法少女モノと称されるタイプの作品群とキャラクターです。幼少時からこのジャンルの作品群が異様に好きで好きで、いい大人になった今現在でもこのテーマで創作をするわ、女児おもちゃコレクターさんの魔女っ子おもちゃコレクション画像を眺めてはニヤニヤするわというダメっぷりを発揮するまでに成り果ててしまいました。
 しかし皆さんご存知の通り、このジャンルは概ね女児向けに制作されます(※大きなお友達向けに深夜に放送されたり、大人にならなきゃ視聴できないメディアで展開されるものもありますが話がややこしくなるので割愛します)(※※あと日曜朝に放送されるあの大人気シリーズは厳密にいうと魔法少女ではないらしいのですが、その辺の定義論は正直手に余るので本稿においてはとりあえず「魔法少女」ってことにさせてください)。
 毎週のように魔法少女番組を楽しんでいた女児たちも、成長するにつれて大好きだった番組から自然に卒業し、少女向け、女性向けコンテンツへと段階的に興味を移していくものとされています。
 とはいえ、大人になっても小さなころに見ていた魔法少女たちのことが好きだという女性たちも多くはなくともそれなりにいるわけですね。魔法少女百合小説などというものを書いてる自分も当然、そちら側に含まれます。──それにしても、まさか自分がそんな大人になっているとは……──話がそれました。
 なんにせよ、いくら好きでも小さな女の子向けのコンテンツからいつまでも卒業できないことにはちょっとした後ろめたさが付き纏います。


 魔法少女番組をみていた少女たちが自然と作品から卒業するように、作中のヒロインたちも最終回で未練もなく魔法の力を手放し、または故郷である魔法の国へ帰るなど各々の日常に還ってゆきます。放送スケジュールが決まっている以上、そうしてオチをつけねばならぬというメタ的な事情があるにしても、いずれ魔法とはサヨナラするという形で女児たちに「魔法なんてなくても、あなた達の中には既に夢をかなえるだけの力が眠っているのですよ」というメッセージを届けるのが、これらの作品群の至上命題ともいえるでしょう。
 ともかく、「魔法の力を授かった少女たちはいずれ魔法の力を手放して各々の日常へ還り、大人になる」、それが一種の様式美となっているわけですね。現代のように魔法少女たちが闘いだすより前の時代、変身してご町内を騒がせたり、人々に夢見る力を取り戻させたり、アイドル活動をしていた頃にはすでにその型は完成し、現在もなお受け継がれております。ベーシックではあるため極めて汎用性も高い型式であると申せましょう。


 ですが、愚鈍で不遜な女児であった私はその型式に多少の不満を抱いておりました。
 せっかくもらった魔法の力、そう簡単に手放せるものかな? 本当は残念だったりしないのかな? 私だったら返したりしないかもな、でもそんな欲深なやつには魔法のペンダントやコンパクトを授けてくれる妖精は来ないだろうな……等。(おおよその世代がバレるのであまり言いたくありませんが)自分が女児時代に親しんでいた魔法少女たちの多くは闘わないタイプだった為、余計にその気持ちが大きかったものです。


 大人になっても魔法少女というジャンルから卒業できない現在の自分。
 魔法の力を手放せる自信が無かった幼い自分。
 この二つの要素は、好きなものにどうしても感じてしまう苦みやトゲといったものです。二つのチクチクする感情を重ね合わせた所から生じたのが、本作のヒロインの雛型だといえます。


 バトル百合小説のアンソロジーにお誘い頂いた時、やはり自分の好きな魔法少女をテーマにしたいと考えました。
 そして、先ほど述べたヒロインの雛形を元に「魔法の力に魅入られてしまい、どんな目に遭ってもいいから自分は絶対卒業しない、意地でもやめてなんかやらないと決意した魔法少女」というキャラクター作り上げました。
 そして、今回のテーマであり、私も大好きな闘う女子と女子という物語を掛け合わせてできたのが本作になります。
 なんらかの理由によって真っ当な活動に背中を向けた魔法少女たちが魔法や物理で殴り合って命や魂、肉体そのものを削り合う様を金を賭けて見物するというヤクザな非合法ショー・魔法少女斗劇ウィッチガールバトルショーが本作の主な舞台となっております。このショーは拙作に時々使っているものですが、いつかこのショーで闘いあう無名の魔法少女たちを書いてみたいと思っておりました。そのチャンスがこういう形で巡ってくるとは。改めて主催者さまには感謝申し上げます。そして原稿の修正やその他で何度もお手をわずらわせてしまってごめんなさい。


 授かった魔法の力を手放せなくなった魔法少女だったヒロインが、どんな場所で、どんな女子と闘うことになるのでしょうか。闘う女子と女子が好きな方も、魔法少女が好きな方も、もちろん両方がお好きな方も、お楽しみいただければ幸いです。

あけないよるへとつづくみち

あけないよるへとつづくみち

 舞台は冷戦下の東ドイツ。国家保安省シュタージ――秘密警察に属する女性ヒルダ・クロル少尉のもとに、ひとりの少女が派遣される。
 少女のコードネームは「カサンドラ」。古い神話の予言の女の名を自ら掲げた弱冠13歳のその少女は、幼くして監視密告の経験を多く積んでいた。
 一通の手紙をきっかけに、自らの秘密警察としての役目に迷うヒルダと、親族、友人すら告発し、異常なまでに党に絶対的な忠誠を誓うカサンドラ。
 表向きは従妹同士を演じ、共同生活を送るなか、カサンドラはヒルダに疑いの目を向け監視し、ヒルダはそれを知りながら互いに牽制し合う。
 しかしヒルダは、少女に問いかけずにはいられない。


「きみはなぜ、こんなことを?」


 その答えを聞けぬまま、ヒルダは反体制派グループの制圧任務に向かうことになるのだが……?


 疑いと裏切りと銃弾が交錯する、おね×ロリ殺伐バトル百合。
 美しく研ぎ澄まされた文章で綴られる橘こっとん先生のヒリヒリとした心理描写、そして緊迫のガンアクションは必見です!

 私の名は橘こっとん。殺伐百合の里に住んでいます。
 中でも我が家の特産品は「女から女への殺意」。なので、必然的に女が女を殺そうとする展開がしばしば発生します。ですがバトル要素を重点的に意識したことはなく、あくまでバトルは殺意の表出の一形態でした。
 それだけにアンソロ参加のお誘いをいただいた時には「全力で闘わねばなるまい」と心を決めました。なにせ右から左まで百合の猛者。里から出てきたばかりの田舎者とはいえ手加減してくれる相手ではありません。同じ土俵に立つ者として、血反吐を吐いてでも立ち向かいます。


 ……と意気込みを語ったはいいものの、割といつもの私の百合です。
 いつものというのはつまり、東ドイツ! おねロリ!! 秘密警察!!!  銃撃戦!!!! 好きなものは全部詰めこみました。
 バトル百合としてはガンアクションに分類されると思います。「MADLAX」で産声をあげ「CANAAN」で自我を確立させた殺伐百合人(さつばつゆりんちゅ)なので、バトル=銃という認識が本能レベルで染みついていました。
 作中のバトルで重視したのはズバリ「戦略」です。登場人物が秘密警察所属なこともあり、相手の出方について考えることを意識しました。アクションと思考の交錯、心身両面において緊迫感ある戦いになっていればと思います。
 東ドイツネタも(たぶん東独入門者にも分かりやすいレベルで)盛りました。銃器は東独製のものはもちろん、ソ連やポーランドの銃も登場します。作中の描写が間違っていないことを祈るばかりです。


 なお拙作「おねロリチェキスト(おロスト)」と世界観を共有していますが、登場人物は独立しているので単体でお楽しみいただけます。
 おロストの倫理観皆無の最悪女×復讐に燃える不屈少女という布陣に対し、今作のお姉さんは使命に悩める無愛想女、少女は密告も厭わぬ体制の申し子。互いに警戒と監視を絶やさない、ちょっぴりヒリヒリしたおねロリです。
 少女はなぜ体制に盲従するのか、女は少女に何を見るのか、行き着く「あけないよる」は罰か救いか。バトル百合に殺伐百合を練りこみ、二重につよつよの百合に仕上げました。見届けていただければ幸いです。
 もちろんおねロリの対峙シーンもあります。互いに銃を向ける女だーーーいすき!!!!!! やったーーーーー!!!!!!!!!


 ――東ドイツに生きるということ。
 国民の180人に一人が秘密警察、90人に一人が密告者。自由なき監視国家に、守る価値など果たしてあるのか。
 答えは銃弾の逢瀬のその先に。東ドイツ最悪おねロリガンアクション、よろしくお願いします。